古今東西アウトサイダーってのは井戸に毒を入れるものなんだろうか。
多読をがんばったりしたことはないんだけど、たまたま知り合いの持ってた本を読んでみた。
Tod Olsenさんって人の「The Plague」って本。中級程度の英語勉強本。ペストが大流行した14世紀のプランスの町で起こった悲劇のお話。
フランスに限らず、ドイツとかイタリアとかスペインとか、キリスト教圏の町では、例によってユダヤ人が虐殺されたらしいね。ペストはユダヤ人が持たらしたものだと。
この物語にもでてくるけど、イタリアでユダヤ人の薬剤師が、「井戸に毒を入れました」って自白を強要される。で、あれよあれよとヨーロッパじゅうのユダヤ人街が焼き払われたそうで。
ユダヤ人はイエスを磔にした奴らだからね。何かあればすぐに「神の怒りがーーー!」ってなるわけだよね。
このサイトに、ちょっと詳しく載ってた。
「宗教情報センター」か。面白いな。ブックマークしとこ。
さて「井戸に毒」で思い出すこと。そうそう、関東大震災の朝鮮人虐殺事件。
「朝鮮人が井戸に毒を入れた」とか「朝鮮人が犯罪者と一緒になって暴れまわっている」とか、そういうデマが流れて朝鮮人をひどい目に合わせたというやつ。
当時の警察や役所の記録を調べたことがある。「井戸に毒」や「暴れまわった」やらは、やっぱりデマだと思う。当時の警察各所の逮捕記録や、裁判記録、役所からの通達、不安を煽る新聞への行政からの批判を読めば、デマだと思うのが妥当だろう。でもって、自警団等による朝鮮人殺害で記録に残っているのが東京だけで53件233人なんだけれど当時の司法大臣は300人以上って語っているし、全国だったらもっとあっただろうね。デマが乗ってる新聞は東京だけじゃなかったから。でもまぁ、6000人は言い過ぎじゃないかなぁ。1000人前後かなというのが個人的な見解。でも、1000人でもかなりひどい話だよ。これはしっかり反省しなきゃね。「すぐホロコーストだなんだ言って、被害を盛りまくるなよ」とか言いわけできないんだよね。「だって朝鮮人は素行がわるかった」とか言ってもさ。当時から日本は法治国家だったわけだから。
ペストの話にもどるけど。
ペスト流行時のユダヤ人虐殺は規模が違っただろうね。でもペストで死んだ人間が当時のヨーロッパの人口の1/3から2/3だって言うから、誰が虐殺で死んだのか、誰が病気で死んだのかわかりゃしないんだけど、虐殺の記録は残っているよね。だって当時のキリスト教信者は「正しいことをした」と思っているんだから、隠す必要もないよね。ペストに対する人々の恐怖は、震災の比じゃないと思うし。
ただ、やっぱりユダヤ人はヨーロッパ人だったのかなぁとは思うんだ。被害の記録がずっと残っているし、なにより虐殺される前は、なんやかんやで一緒に住んでたわけじゃん。差別はあっただろうけど、擁護もされてた。だから、お金持ちも多くて、やっかみもあった。そして「ずるい=頭がいい」と思われてた。その辺が、黒人やアジア人とは違う。
「井戸に毒」事件で最近話題になってたひどい事件がある。
「ヘレロ・ナマクア虐殺は、ドイツ領南西アフリカ(現・ナミビア)においてドイツ帝国が先住民族に対して行った虐殺。アフリカ分割の動きの中の1904年から1907年にかけて行われ、20世紀最初のジェノサイドと考えられている」
という話なんだけど、この虐殺のひどいところは、さんざん攻撃して追い詰めて強制収容・強制労働の上で、最後は餓死&中毒死させたってとこ。ナミブ砂漠に追いやられたヘレロ族とナマクア族の使用する井戸に毒を入れたって話。
「約6万人のヘレロ族(全人口8万人のうち、80%)、1万人のナマクア族(全人口2万人のうち50%)が死亡した」ってさ。
おいおい。これこそガチの民族浄化じゃないかよ。
とは言っても。
白人の皆様による有色人種の虐殺の歴史は枚挙にいとまがないわけですし。
上のナミビアやら、コンゴのベルギーによる虐殺なんかは、最近のだから記録に残ってるってだけですし。
やれナチだ、ホロコーストだとか言ってるけれども。
「井戸に毒を入れた」疑惑で虐殺された方々の話の一方で、本当に「井戸に毒を入れて殺された」方々の話にも本腰を入れてほしいと一有色人種の私などは思うわけです。
「やつらずるいから」
「やつら素行が悪から」
「やつら人間じゃないから」
とか言うのはね。ジェノサイドを肯定する理由になり得るはずがないって話。
最後になって申し訳ないけど、
「The Plague」は、なかなかいい物語だった。一応ハッピーエンドだと思うしね。