悪意の解放・善意の発露 

つまりは、こっそり言いたいことを言うブログ

あなた方はアメリカをいったいどうしたいんだい?(テュルク系の人たちの話から)

少し前、テュルク系(テュルク語族って言った方がいいのかな)の人たちの食事会に誘われて行ったときの話。

 

テュルクってのはWikiによると「中央アジアを中心にシベリアからアナトリア半島にいたる広大な地域に広がって居住する、テュルク諸語を母語とする人々のことを指す民族名称である」とのこと。トルコをはじめとして、カザフスタンやウズベキスタンなどのいわゆる「スタン系」の国々、イラン、シリア、ロシアの方にも大勢いて、あとウイグル族なんかもテュルク族の仲間だそうだ。

 

私を誘ってくれたのはキルギス人だったのだけれど、そこに集まってたのは、本当にいろんな国の人で、顔も服装もまちまちだった。白人みたいな顔の人もいれば、日本人と間違いそうな人もいた。本当に広い範囲にいる民族なんだなぁと感心した。聞けばトルコを中心としたテュルク族のみなさんは、諸外国へ行っても助け合って家族のように生きているのだとう話だった。

 

リーダーっぽい初老の男性はトルコ人とのことで、皆さんの尊敬を集めている雰囲気だった。彼は日本にも来たことがあるとかで、とても親切に話しかけてくれた。

 

彼はアメリカがテュルク語族の子どもたちの教育に力を入れているらしい。平日はアメリカの学校に通って、週末にテュルク語とその文化を学べる学校に通うように尽力しているようだ。学校には礼拝をする場所もある。各宗派の人たちが、好きなように祈っていいらしい。今の中東の争いのことを考えると、平和なことこの上ないね。

 

アメリカの日本人学校にも補習校というのがあって、平日はアメリカの学校に通い、週末は日本語と日本の教科書を学ぶ。最近は全日制の日本人学校に通う子どもも減り、補習校が賑わっていると聞いた。それと似たようなものだろうか。

 

彼は人気者だから、しばらくして他のテーブルに移ってしまったが、いろんな方々が話しかけてくれた。私もあまり英語が得意ではないのだが、彼らもすべてが英語が得意というわけではなさそうで、会話が弾むということはあまりなかった。ただ、ひとり積極的に話しかけてくれる女性がいた。

 

彼女の親戚はヨーロッパの方へ移住したとのことだった。失礼ながらと聞いていたのが「ドイツにはトルコの方が多く住んでいると聞いたのだけど、どうしてアメリカを選んだんですか?」ってことだった。

 

「確かにドイツにはトルコ人がたくさん住んでいるけど、教育にはやっぱりアメリカがいいと思ったの。誰でも絶対に教育をうけさせてくれるし、私たちに対する差別も少ないわ」

 

確かに。なんだかんだ言ってアメリカは移民に手厚い。そこに住んでさえいれば、誰でもその場所の義務教育を受けることができるうえ、英語が話せない人たちへのケアも非常に手厚い。コミュニティカレッジという誰でも入れる短大のような場所もたくさんあって、そこも外国人に親切だ。

 

その女性は、こんなことを言い出した。

「私たちは留学しにアメリカにやってくるのよ。そしてアメリカで子どもを産むの。アメリカで産まれた子どもはアメリカ人よ。私たちはここに学校を作り、ここで学びながら働いて暮らすの。今はテュルク族は少ないけれど、きっとこれから大勢になっていくわ」

 

大国トルコは置いておいて、中央アジアのテュルク系のみなさんは近代非常に気の毒な目にあっているなぁとなんとなく思っている。国境を超えて点在していたために、争うことができなかったこともあるんだろうとも思う。国というのは民族ごとに構成されていると感覚が日本人にはあるが、実際はそうでない国の方が多いらしい。

 

それにアメリカはトルコ人移民に対しては大きなことは言えないと思う。

なんせトルコは難民受け入れ国ランニングぶっちぎりの第1位なんだから。

www.unhcr.or.jp

 

250万人も受け入れているってすごいな。

 

ついでに世界の移民がひとめでわかるランキング。2015年の統計。

ailovei.com

 

トルコ在住の移民は458万人。人口の5.81%。立派な移民大国だよね。

ちなみに日本にいる移民は244万人。トルコが受け入れている難民よりも少ないね。

 

それはいいとして、大勢の難民移民を受け入れている一方、多くが外国へ流れていく。テュルク族はもともと国境を超えて繋がっている人たちだから、国籍へのアイデンティティはないのかもしれない。

 

ただ、ふと思う。

 

「あなた方は、アメリカをいったいどうしたいんだい?」

 

たしかにアメリカは移民大国だ。そして裕福で寛容だ。でもここで人口を増やして、アメリカがどんな国になればいいと思うんだろう。

 

ぼんやりと世界中の人たちが仲良く暮らすユートピアを目指してくる移民の方々も多いと思う。でも、アメリカにだって血とエゴと憎しみの歴史があり、その上にこの裕福な国がある。

 

この国の自由はネイティブアメリカンをなぎ倒した白人クリスチャン(とその奴隷だった黒人)が、また自分たちで血で血を洗う争いをして(20万人もの人間が死んで)築き上げた国なのだ。ヨーロッパもそうだ。世界中のあちこちで、いろんな国の人たちの血と涙を踏み台にして、自らも傷つけまくって、豊かになった国々だ。

 

いずれイスラム教徒が国民の過半数をしめることになったら、選ばれた大統領はコーランに手を置き誓うのかい? アーリントン墓地での式典では、みんなが地面に額をつけて祈るのかい?

 

あなた方には、この自由の大国を動かす覚悟があるのかい? アメリカの富を築き上げた人たちのように、世界中の富を貪る残酷さがあるのかい?

 

アメリカはいつまでも広大なフロンティアじゃない。

カンダタは下からやってくる亡者を蹴落としたから、地獄に逆戻りしたらしいが、アメリカへ向かう蜘蛛の糸を垂らしているのはお釈迦様じゃないし、アメリカは極楽浄土でもないんだよなんて。

 

そんな考えは、意地悪なんだろうか。

 

私はただ、あの人たちにも幸せになって欲しいと思うばかりなんだけれど。

 

 

追記:

そういえば、トルコ人の人からエルトゥールル号の映画を見たかと聞かれた。

ああ、「海南1890」のことか。

まだ見てないです、でもその事件のことは知っていますと。

中東戦争のときに飛行機を飛ばしてくれたことを日本人はみな感謝していますよと言った。

この会話はトルコ人と日本人のお決まりのやりとりかも知れないな。

   

www.toei.co.jp

 

そういえば、キルギス人の子が学校に「乙嫁語り」という漫画が置いてあると言っていたな。

あそこに描かれているのは、ほとんど事実だと言っていた。私も彼女も英語があまり得意じゃないから、描かれている文化や服装が事実なのか、展開される歴史が事実なのかってのは、よくわからなかった。

www.kadokawa.co.jp

 

英語、結局ろくに話せないままだな(反省)。