常識なんて場所によって違ってことを中々受け入れられない その2(ブラジルの話)
その1で書いたビジネスマンとの会話に戻る。
彼はブラジルの景気が最悪だという話をした。
数年前まではBRICSなんて言われたのに、けっこうな負け組だ。
そういや、キリンも撤退を決めたとかニュースで見たな。
「キリンは偉いなと思ったよ。損切りは早い方がいい。3000億円投資したやつを撤退するんだから、大した勇気だけど、これ以上待っても傷が広がるだけだ。なかなか大きな企業はこうはいかない」
でもさぁ。結局見通しが間違ってたから、失敗したわけでしょう? 担当者は責任感じてるだろうねぇ。
「いや、これは無理ないよ。資源と土地があって、あれだけの人口があって、GDPが世界7位で、景気が上昇中で、しかもW杯とオリンピックが決まってたんだから。鉄板投資だと誰でも思うよ。日本の企業もEUの企業も、そりゃこぞって投資するさ」
じゃあ、なんでこんなになったの?
やっぱ新興国特有のインフレ不景気ってやつ?
「そんな甘いもんじゃないよ。あそこは。国家予算並みの金額が、個人の懐に入ったんだよ。そりゃ一人のってわけじゃないだろうけど、ブラジルの上層部はそれだけ腐ってるんだよ」
そんなことってある? だって、自分の国が発展するチャンスだったんだよ? 今より金持ちになれるチャンスだったかもしれないじゃん?
「そんなこと、あいつら何にも考えちゃいないよ。あれだけの金額すべてインフラとか設備とかに投資してたら、ぜったいに国民も豊かになったし、一気に先進国に躍りでるチャンスもあったんだ。あんな露骨なこと、中共でもやんないよ」
彼は吐き捨てるように言った。彼の会社も損益でたのかなぁ。
「考えられんことが、起こるんだよ。途上国ってとこは」
彼の話を聞いた後、ニュースを探してみた。
これはちょっと表面的だなぁ。リベートの件、どっかが報じてないかなぁ。
少し昔のニュースだけど、これなんか関係あるのかな。
けっこうな汚職事件じゃないか。
私は何にも知らなかったんだなぁ。
ふと、彼女の話を思い出した。
「ブラジルは政治家や偉い人たちが、本当にひどいんです」
その話を聞いたとき「すぐ上の人間のせいにするんだよなぁ」なんて、ぼんやり思ってた。自分たちの力で政治を変えてみろよと。
しかし、車の中にいても撃たれるような場所で、国家予算並みの資産を持つ連中相手に市民ができることがあるだろうか。
だからと言って他国に行って「平等に扱え」はないだろう?
いや、これは私の国の感覚なんだろう。常識なんて場所によって違うんだろう。
私の考えなんて、偏狭なお花畑のローカルルールなのかもしれない。
なかなか実感できないのだけれど。